
生活習慣病の 本当の 治療は、 診察室の 外に あります
「先生、数値も安定しているんだから、お薬だけ出して、2〜3か月分まとめてもらえませんか」。診察室で、こうした声を本当によくお聞きします。
仕事を抜けて来るのも、待合室で待つのも、正直なところ大変ですよね。「どうせ同じ薬をもらうだけなのに」と感じるのは、とても自然なことだと思います。
この記事では、生活習慣病の通院で、なぜ月に一度お会いすることをおすすめしているのかをお話しします。結論から言うと、生活習慣病の治療の中心はお薬そのものではなく、日々の暮らしの小さな変化にあります。そして、月に一度、医師と一緒に数字と生活を振り返る時間は、その変化を続けるための、治療の大切な一部だと考えています。
お薬だけでは、 病気は 治りきらない
高血圧、脂質異常症、糖尿病のお薬は、数値を下げる力をしっかり持っています。ただ、お薬にできるのは、主に「数値を整えること」です。
- 塩分の多い食事が続けば、血圧の薬は効きにくくなります
- 体を動かす機会が減れば、血糖やコレステロールは上がりやすくなります
- 睡眠不足やストレスも、数値に表れます
つまり、毎日の食事・運動・睡眠という「土台」が変わらないままでは、お薬の量が少しずつ増えていくことも珍しくありません。
正直に申し上げると、「お薬を出すだけの医療」には限界があります。その限界を越えられるのは、診察室の外で過ごす、皆さんの毎日の暮らしなのです。
「意識すること」が、 体を 変える
ここで、ひとつ興味深い研究をご紹介します。
ハーバード大学の、 ホテル客室係の 研究
2007年、ハーバード大学のクラム博士らは、ホテルで客室の清掃をしている女性たちを対象に、ある研究を行いました。
- 一方のグループには「皆さんが毎日している清掃の仕事は、立派な運動になっています」と、消費カロリーの目安とともに伝えました
- もう一方のグループには、何も伝えませんでした
すると4週間後、伝えられたグループでは、仕事の内容は変わっていないと答えていたにもかかわらず、体重や体脂肪がわずかに減り、血圧も下がったと報告されています。
この研究は対象の人数が少なく、短い期間のものなので、結果をそのまま当てはめることはできません。それでも、「自分の行動は体に良い影響を与えている」と意識することが、体の変化と結びつきうることを示した研究として知られています。
月に 一度の 「振り返り」が、 意識を リセットする
人の決意は、どうしても少しずつ緩んでいくものです。私自身もそうです。
だからこそ、月に一度、
- 血圧や検査の数字を一緒に確認する
- 「この1か月、何がうまくいったか」を振り返る
- 次の1か月で、無理なくできることを一つだけ決める
この時間が、緩みかけた意識を整え直し、「また頑張ってみよう」と思えるきっかけになります。お薬と同じくらい、ときにはそれ以上に、治療を支える時間だと考えています。
間隔が あきすぎると 起こる 「見えない変化」
通院の間隔が2か月、3か月とあくと、その間に生活が少しずつ元に戻ってしまうことがあります。
- 季節の変わり目や年末年始で、食事や運動のリズムが崩れる
- 自宅での血圧測定が、いつの間にか途切れる
- 体重が少しずつ増えていても、気づきにくい
こうした変化は自覚症状がないまま進むため、次に受診したときには、数値が悪化していることがあります。月に一度お会いしていれば、小さなずれのうちに気づき、早めに軌道修正ができます。
もちろん、状態が長く安定している方には、通院の間隔を相談しながら調整することもあります。大切なのは、間隔の長さそのものより、「振り返る機会を途切れさせないこと」です。
院長からの メッセージ
当院への毎月の通院は、ただお薬をお渡しする場所ではありません。あなたの健康を守るための、生活習慣の軌道修正(メンテナンス)の時間です。
お説教をするつもりはありません。うまくいかなかった月があっても大丈夫です。その月の暮らしの事情をお聞きしながら、今の生活の中で無理なくできることを、一緒に考えていきます。
「〇〇をテーマにブログを書いてほしい」などのご要望があれば、キバナビにお気軽にお寄せください。院長にお伝えします。どなたからのご要望かが院長に伝わることはありませんので、安心してどうぞ。
