
1日 一食しか 食べてないのに 痩せない あなたへ
「先生、1日1食しか食べていないのに、ちっとも痩せないんです」。診察室で、こうした声を本当によくお聞きします。朝も昼も我慢して、夜の1食だけ。それなのに体重は変わらない、むしろ以前より太りやすくなった気がする——。そのつらさは、努力してきた方ほど大きいと思います。
この記事を読んでいただくと、1日1食で痩せにくくなる体の仕組みと、今日からできる改善策が分かります。結論から言うと、食事の回数を極端に減らすと、体は「省エネモード」に入り、筋肉が落ち、脂肪をため込みやすい状態になります。「食べないほど痩せる」とは限らないのです。
理由1:体が 「省エネモード」に 入る
体は、長い時間エネルギーが入ってこないと「飢餓に備えなければ」と判断し、消費するエネルギーを節約しようとします。
特に40代以降で気をつけたいのが、筋肉の減少です。
- 筋肉を保つには、毎食しっかりタンパク質をとることが大切です。年齢とともに、1回の食事で筋肉を作れる量には限りが出てきます。
- 1日1食では、1日に必要なタンパク質を1回でとりきれず、筋肉が少しずつ落ちていきます。
- 筋肉は、じっとしていてもエネルギーを使う「燃費の悪い」組織です。筋肉が減ると、基礎代謝(何もしなくても消費するエネルギー)が下がり、同じ量を食べても太りやすくなります。
体重が少し減ったとしても、その中身が脂肪ではなく筋肉だった、ということも少なくありません。
理由2:血糖値スパイクと インスリン
長い空腹のあとに食事をとると、血糖値が急に大きく上がりやすくなります。これを「血糖値スパイク」と呼びます。
インスリンは 「ため込むホルモン」
血糖値が急に上がると、すい臓からインスリンというホルモンがたくさん出ます。インスリンは血糖値を下げる大切なホルモンですが、同時に、使いきれなかったエネルギーを脂肪としてため込むはたらきも持っています。
1食に まとめると、 さらに 不利に
1日1食の方は、その1食がつい大盛りになったり、早食いになったりしがちです。一度に多くの糖質が入ることで、血糖値スパイクがさらに起こりやすくなります。血糖値の乱高下をくり返すことは、将来の糖尿病のリスクにもつながります。
理由3:食事で 燃やすエネルギー (DIT)を 取り こぼしている
実は、食べること自体でもエネルギーは使われています。これを「食事誘発性熱産生(DIT)」と呼び、食後に体がポカポカするのはこのためです。
- DITは、タンパク質を食べたときに特に大きくなります。
- よく噛んで食べると、DITが増えることも分かっています。
1日1食の食事は、空腹のあまり早食いになり、ご飯や麺などの糖質中心になりがちです。つまり、せっかく食べているのに、食事で燃やせるはずのエネルギーを取りこぼしている状態です。回数そのものよりも、「何を・どう食べるか」で差が出るところです。
院長からの アドバイス: 今 日から できる こと
1. 極端な 絶食を やめ、 2〜3食に 分ける
1日の量はそのままで構いません。まずは2〜3回に分けて食べることから始めてみてください。
2. 毎食、 タンパク質を 「手のひら1枚分」
肉・魚・卵・大豆製品などを、毎食、手のひら1枚分くらいとるのが目安です。朝食がつらい方は、ゆで卵・ヨーグルト・納豆など手軽なもので十分です。
3. 野菜から、 よく 噛んで
野菜や汁物から先に食べ、よく噛むことで、血糖値の急上昇をやわらげられます。
4. 筋肉を 守る 運動を 少しずつ
食後の10分の散歩や、テレビを見ながらのスクワットなど、無理のない範囲で筋肉を使う習慣を足してみてください。
なお、糖尿病のお薬を使っている方が自己判断で食事を抜くと、低血糖を起こす危険があります。食事の回数を変える前に、必ず主治医にご相談ください。
結び:体の 仕組みを 味方に つけましょう
体重が減らないのは、あなたの努力が足りないからではありません。体が、あなたを守ろうとして省エネモードに切り替わっているだけなのです。
急激なダイエットよりも、代謝を落とさず、筋肉を守りながら、ゆっくり体を整えていくことが、遠回りのようでいちばんの近道です。食事の工夫に迷ったときや、健診で血糖値・体重のことを指摘されたときは、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に、無理なく続けられる方法を見つけていきましょう。
