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木花のむら総合診療所内科・外科・小児科
咳が長引く・健診で「影」——肺NTM症(肺MAC症)とは?原因・症状と「人にうつるの?」にお答えします
健康・予防の話

咳が長引く・健診で「影」——肺NTM症(肺MAC症)とは?原因・症状と「人にうつるの?」にお答えします

「風邪はとっくに治ったはずなのに、咳だけが何週間も続いている」「健診の胸のレントゲンで『影がある』と言われ、CTを撮ったら『肺NTM症の疑い』と書かれていた」。聞き慣れない病名をインターネットで調べると、「結核の仲間」「治りにくい」といった言葉が目に入り、かえって不安が大きくなってしまった——そんな方も多いのではないでしょうか。

最初に、いちばん気にされることからお伝えします。肺NTM症は、人から人へはうつりません。 ご家族やお孫さんと、これまでどおり一緒に過ごしていただいて大丈夫です。また、多くの場合は何年もかけてゆっくり進む病気で、慌てて何かをしなければならないものでもありません。

この記事では、「肺NTM症」と「肺MAC症」の違い、なぜかかるのか、どんな症状が出るのか、そして当院での検査や治療の考え方を、できるだけ分かりやすくご説明します。

「肺NTM症」とは?「肺MAC症」との違い

NTMとは、「非結核性抗酸菌(Non-Tuberculous Mycobacteria)」の略です。少し難しい名前ですが、分解すると分かりやすくなります。

  • 抗酸菌:検査で強い酸を使って洗っても色が落ちにくい性質を持つ細菌のグループ。代表が「結核菌」です(名前の由来や、治療に時間がかかる理由は「抗酸菌」の記事でご紹介しています)
  • 非結核性:その抗酸菌のうち、結核菌(とハンセン病の原因となる菌)以外のもの

つまり、NTMは「結核菌と同じグループに属するけれど、結核菌ではない菌」の総称で、約200種類が知られています。この菌が肺に住みついて炎症を起こす病気が、肺NTM症(肺非結核性抗酸菌症)です。

では、肺MAC症とは何でしょうか。NTMにはたくさんの種類がありますが、日本の肺NTM症の約9割は「MAC(マック)」と呼ばれる菌によるものです。MACは「マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(Mycobacterium avium complex)」の略で、アビウム菌とイントラセルラーレ菌という、よく似た2種類の菌をまとめた呼び名です。

整理すると、次のような関係になります。

  • 肺NTM症:結核菌以外の抗酸菌による肺の病気の「総称」
  • 肺MAC症:そのうち、MACという菌による肺NTM症。日本ではほとんどがこのタイプ

「NTM症」と「MAC症」は別の病気ではなく、大きな枠(NTM症)の中に、いちばん多いタイプ(MAC症)があると考えていただくと分かりやすいと思います。

肺NTM症は、日本で近年はっきりと増えている病気です。全国調査では、患者さんの数が結核に匹敵する、あるいはそれを上回る規模になっていると報告されています。特に、中高年の、やせ型の女性に多くみられるのが特徴です。決して珍しい病気ではありません。

肺NTM症の原因は?「人にうつる」のかという疑問

菌は、身近な「土」や「水」にいます

NTMは、特別な場所にいる菌ではありません。土の中や、水まわり(浴室・シャワーヘッド・加湿器・水道など)といった、私たちの身近な環境に普通に住んでいます。

土いじりやガーデニング、シャワーの湯気などを通して、菌を含んだ細かいほこりや水しぶきを吸い込むことで、肺に入ると考えられています。ただし、同じ環境で暮らしていても、ほとんどの人は発病しません。なぜ一部の人だけが発病するのかは、体質や肺の状態など、まだ分かっていない部分も多いのが正直なところです。

人から人へは、うつりません

ここが、いちばん大切なポイントです。肺NTM症は、結核と同じ「抗酸菌」による病気ですが、結核とは違って、人から人へうつることはないと考えられています。そのため、結核のような保健所への届け出や、入院・隔離の必要もありません。

  • ご家族と同じ部屋で過ごしても大丈夫です
  • 食器やタオルを分ける必要もありません
  • お孫さんを抱っこしても問題ありません

「家族にうつしてしまったらどうしよう」と、ひとりで抱え込む必要はありません。どうか安心してください。

日常生活でできること

菌は身近な環境にいるため、完全に避けることはできません。それでも、次のような工夫で、菌を吸い込む機会を減らすことができます。

  • 浴室の換気・掃除をこまめにし、シャワーヘッドも定期的に洗う
  • 加湿器は毎日水を替え、こまめに掃除する
  • 土いじりやガーデニングをするときは、マスクをつける
  • しっかり食べて、体重と体力を保つ(やせすぎは、病気が進みやすくなる一因と考えられています)

肺NTM症の症状は?長引く咳・痰に注意

肺NTM症は、とてもゆっくり進む病気です。そのため、初めのうちはほとんど症状がなく、健診の胸部レントゲンやCTで偶然見つかることが少なくありません。

病気が進んでくると、次のような症状が出ることがあります。

  • 長引く咳(数週間〜数か月続く)
  • 痰が出る、ときに痰に血が混じる(血痰)
  • 微熱が続く
  • だるさ(倦怠感)、疲れやすい
  • 寝汗、食欲の低下、体重の減少

どれも風邪や気管支炎、ほかの肺の病気でも起こる症状で、症状だけで肺NTM症と見分けることはできません。だからこそ、「咳が3週間以上続く」「健診で影を指摘された」ときは、そのままにせず、一度きちんと調べることが大切です。

当院での検査・診断・治療の方針

検査:CTと痰の検査で「菌」を確かめる

肺NTM症の診断には、「画像」と「菌」の両方の確認が必要です。

  • 胸部レントゲン・CT:当院では院内のCTで、肺の影の広がりや形をその日のうちに詳しく確認できます。肺NTM症では、小さな粒状の影や、気管支が広がった変化(気管支拡張)などが特徴的です
  • 痰の検査:痰の中に抗酸菌がいるかを調べ、培養して菌の種類を確かめます。菌はゆっくり増えるため、結果が出るまでに数週間かかります。原則として、2回以上の痰から同じ菌が見つかることが、診断の目安の一つです
  • 血液検査:肺MAC症の診断の補助として、MACに対する抗体を調べる血液検査(保険適用)もあります

同じ抗酸菌による結核ではないことを確かめるのも、とても重要な役割です。

治療:すぐに薬を始めるとは限りません

肺NTM症と診断されても、すぐに治療を始めるとは限りません。症状が軽く、影の広がりも小さく、進み方がゆっくりな場合は、定期的にCTや痰の検査を行いながら経過を見ることも、しっかりとした選択肢の一つです。

一方、病気が進んでいる場合や、肺に空洞ができている場合などは、複数の抗菌薬を組み合わせた治療を行います。肺MAC症では、一般的に3種類の飲み薬を組み合わせ、菌が出なくなってからも1年以上続けるため、治療は長期間に及びます。薬の副作用(目の見え方の変化、肝臓の数値など)にも気を配りながら進める必要があります。

当院では、軽症と判断できる場合は、当院で治療を行うこともあります。一方、病気が進んで重症化した場合には、呼吸器を専門とする医療機関にご紹介します。

まとめ:肺NTM症と言われて不安な方へ

最後に、大切なポイントをまとめます。

  • 肺NTM症は結核菌以外の抗酸菌による肺の病気で、日本ではその約9割が肺MAC症
  • 菌は土や水まわりなど身近な環境にいて、人から人へはうつらない
  • 初めは症状がないことも多く、進むと長引く咳・痰・微熱・だるさなどが出る
  • 診断にはCTと痰の検査が必要で、すぐに治療が必要とは限らない

院長からのメッセージ

「肺NTM症」「肺MAC症」と聞くと、聞き慣れない名前に驚き、インターネットの情報を読んで不安になってしまうのは自然なことです。けれど、この病気の多くはゆっくり進み、正しく理解して、自分に合ったペースで経過を見ていけば、日常生活を大きく変えずに付き合っていける病気でもあります。

大切なのは、ひとりで抱え込まず、定期的に診てもらえる医師を持つことです。開院後、当院では院内のCTを活かして肺の状態をしっかり確認し、必要に応じて専門の医療機関とも連携しながら、長い目で寄り添っていきたいと考えています。「咳がなかなか止まらない」「健診で影があると言われたけれど、どこに行けばいいか分からない」——そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。

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