
「治す」だけでなく、 「長く付き合う」医療に ついて
「先生、このお薬、一生付き合っていくんですか」。高血圧や糖尿病の患者さんから、これまでの診療の中でよくそう聞かれてきました。その声には、「治らないのか」という落胆と、「ずっと病気の自分でいるのか」という寂しさが、いつも少しだけ混じっているように感じます。
この記事を読んでいただくと、高血圧や糖尿病のように長く付き合っていく病気に対して、私がどんな姿勢で向き合っているかが分かります。結論から言うと、私は「治す」ことだけを医療のゴールにしていません。むしろ、長く付き合っていく病気とどう上手に折り合いをつけるかを、患者さんと一緒に考えることこそが、自分の役目だと思っています。
「治らない」と 「悪くならない」は、 まったく 別の ことです
高血圧や糖尿病は、多くの場合、完全に「治って」薬が一切不要になるとは限らない病気です。生活習慣の改善で薬を減らせたり、場合によっては中止できたりする方もいますが、多くの方にとっては長く付き合っていく病気でもあります。ですが、それは「何をしても同じ」ということでは決してありません。しっかり数値をコントロールできていれば、何年経っても合併症のリスクを大きく抑えながら、これまでと変わらない毎日を送れる方がほとんどです。「治らない」と「悪くならない」はまったく別のことで、私たちが目指しているのは、むしろ後者です。
一生の お付き合いだから こそ、 無理の ない 距離感を
一生付き合っていく病気だからこそ、最初から全力で頑張りすぎる必要はないと思っています。急に食事を厳しく制限したり、無理な運動量を課したりしても、たいてい長続きしません。それよりも、ご本人の生活や好みに合わせて、少しずつ・無理なく続けられるやり方を一緒に探すほうが、結果的に何年も続けられます。治療は短距離走ではなく、長い道のりを一緒に歩くようなものだと考えています。
数値の 裏に ある 暮らしを 見ています
同じ血圧の数値でも、その背景にある生活は人それぞれです。仕事の都合で食事の時間が不規則な方、家族の介護で自分のことが後回しになりがちな方、すでに十分頑張っているのにもう一声求められて疲れてしまっている方。数値だけを見て画一的な指導をするのではなく、その方の暮らしの事情を聞いたうえで、今の生活の中で無理なくできることから一緒に考えていきたいと思っています。
「一生このお薬と付き合うのか」と思うと気が重くなるかもしれませんが、それは「ずっと我慢を強いられる」ということではありません。ご自身の体と、無理のない距離感で、長く付き合っていく——そのための伴走者でありたいと思っています。何か不安なことがあれば、どうぞ遠慮なくお聞かせください。
